赤いTシャツ。
何者でもない。
youtubeで何か見ようかと開いて、ふとあがってきた。
加川良が久留米のラーメン屋でライブをしている時の動画。泉谷しげるの春夏秋冬をカバーしてる。真っ暗な映像の中に、加川さんにスポットがあたる照明のみ。
赤いTシャツが妙に鮮やか。
2015年のライブらしい。当然今の空気感を予見していた訳はないんだけれど、家の中で季節を耐えしのぐような姿が妙に今にリンクする。
歌い始める前のMCでもこんな言葉を。
「ま、がんばろな…。あ、がんばらんでええわな。がんばらんでええわ、がんばらんでな…。」
文脈を考えると、お互い歳をとったけどがんばろうなって事を言っているんだけど、歌詞の内容も相まってどうしてもすがる思いで、今の状況に繋げてしまいたくなるのだ。生きていたら今この曲を歌っただろうとも思う。
そして、「今日ですべてがおわるさ…」と歌い始める。
春を失ってしまった2020年。
今まさに「春を眺める余裕もなく…」季節は流れている。これからどれくらいかかるか分からないけれど、きっとこの状況は終息していくのだろうと願う。
今日ですべてが終わるさ 今日ですべてが変わる
今日ですべてが報われる 今日ですべてが始まるさ
狭い空間で孤独や無力を経験し、
きっとまたいつもの広い世界の中で何者でもない自分に戻る。
それでも今なら何者かになれるだろうか。
こぶしに握った爪跡には嘘はつけない。
加川さんの赤いTシャツに、自らの決意をなぞらえる。
加川良 / 春夏秋冬