具島直子『mellow medicine』を聴く。
振り返ると今年は音楽を仕事として聴くことが大半だったな。仕事で必要な範囲の音楽や、プライベートでももっぱら自分のカテゴリー内で生活のBGMとしてや、感情を意図的にコントロールしたりする為に音楽を聴く機会が非常に多かったし。
新しい作品を聴き込む事や、自分の知らない昔の音楽を(所謂)ディグる事をあまりしなかった一年と言える。
だから、今年のベストディスクの選盤とかもうどうしていいか分からない。逆にエントリー数が少ないからすぐ選べたりしてしまう。
そんな中での具島直子。
ずっと廃盤だった3作のアルバムが最新リマスターで再発。
どれも最高なんだけれど、
中でもやっぱり“mellow medicine”は格別。基本的に具島直子本人が作詞作曲を全曲手掛けてるって言うのもぐっとくる。
一見シンガーソングライター風のアーティストの佳曲が、作詞作曲を見ると違う名前だったりした時の説得力のなさを感じる事がたまにある。
その点、具島直子の歌声にはリアリティがくっきりと浮かぶ。淡々と見えて感情の機微を実に繊細に紡いでいるヴォーカルは、祈りを捧げるかの如く荘厳。それをなめらかに優しく包み込むバンドメンバーのグルーヴも、トロットロで濃厚なメロウムードをジャズマナーで極限までスムースに研ぎ澄ませている。
ちょうど12月に入った所。
盛り沢山なイベントへの期待と同時に、どうしようもないいつかの恋の苦さも毎年一緒に運んでくる。
街に溢れたワクワク感を優しくクールダウンしてくれる「12月の街」が、どちらにせよ至福の時間を与えてくれる。