phatback

…あれとかこれとか。

明け際の音分布

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一先ず。自粛が明け、平常に戻りつつある。

人混みでの息づかいにも大分余裕が出てきた。

徐々にいつもの生活に慣れながら、自粛中に築いた余白を守るようにする。そぎ落とされた生活から、蓄積する生活を経て、上手くバランスを保っている。こういう事がなければきっとそぎ落とされ続けていたと思う。やりたい事はなるべく強引にでもやろうと思える余裕もある。郷に入れば郷に従え。自分の中にあるそういう郷のスポットに今いるのだろう。マイナスをプラスへと導く癖はもはや自分のものになっている。

 

仕事帰りに本屋に立ち寄った。気になっていた筒井康隆の「残像に口紅を」も買った。帯にアメトーークで紹介されて大反響と書いてあったので妙に手に取りにくかったが、平積みの下から二つめを取り出す。それはいつも通り。汚れたものは勿論避けたいが、それ以上に、おそらくは誰もめくっていないページをめくるのが好きだ。あの印刷の匂いも。

 

15年くらい前に買ったフィメール・ファンクのレアコンピも引っ張り出して聴いている。Little Annの「Going Down A One Way Street」がほんといい。キュートなまま高音から低音へと降りてくる声のグルーヴ感が、鼻と目の間から肩を波打たせてきて妙に気持ちいい。なのに当時は不遇だったというのだから何とも勿体ない。評価してくれるのであれば、なるべく生きてるうちにされたいなあ。しかしDave Hamiltonが手掛けたローカル・ファンクはどれもが瑞々しい。

これもまたかなり昔に買ったアンダーグラウンドデトロイトハウスのコンピも聴いている。

たまたまだがデトロイトが続いている。

昼に食べた油そばも美味かった。

伸び過ぎた髪は来週には切りに行こう。

 

最近これもよく聴いている。決して男前とは言えないメンバー5人が、オフィス街みたいな所を踊りながら闊歩する。踊りもなんだかもっちゃりしていて可愛らしさもある。このバブル感は嫌いじゃない。渡辺正行のコーラ一気飲み芸を見てる時と同じ感じがしてじわじわくる。

これはLAだけど。

The Whispers / Keep On Lovin' Me

https://m.youtube.com/watch?v=d6aRvVTSC0I

残り香。

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地位も名誉も金もない。

才能も徳も欲もない。
何もないからと、嘘のない衝動に身をまかせてみると、そのあと少しだけは何かが残る。
花火みたいかと言いたいが、せいぜい晩ご飯の残り香ぐらい。
そのうちまたすぐに消える。
それでいいかと思える瞬間も時々はある。
それが今日。

 


有要で街へ出た。
テレビでは、自粛が緩んで…って言うけど、街には先週ほどではないが、人も車も充分少ない。さっき見たタクシーの運転手はボンネットに座って腕組みしてるし。

確かに郊外や公園に車で出かけたりする人は多いかもしれないが、いつもはここにいるはずで、今ここにいない圧倒的な人達の多くはなるべく家にいるのだろうと思うし、そう信じたい。

そこに見えない存在も、筋を曲がれば。
だれもいない通りにも。
記憶にも留まらずにすれ違う見知らぬ顔も。

見方を変えれば。

 

ところでカルロス・ゴーンはどこいった。

 

THE TRUE REFLECTIONS

/ That Was Yesterday

https://m.youtube.com/watch?v=sOOZoLgD0XA

赤いTシャツ。

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何者でもない。

 

youtubeで何か見ようかと開いて、ふとあがってきた。

加川良が久留米のラーメン屋でライブをしている時の動画。泉谷しげるの春夏秋冬をカバーしてる。真っ暗な映像の中に、加川さんにスポットがあたる照明のみ。

赤いTシャツが妙に鮮やか。

2015年のライブらしい。当然今の空気感を予見していた訳はないんだけれど、家の中で季節を耐えしのぐような姿が妙に今にリンクする。

歌い始める前のMCでもこんな言葉を。

 

「ま、がんばろな…。あ、がんばらんでええわな。がんばらんでええわ、がんばらんでな…。」

 

文脈を考えると、お互い歳をとったけどがんばろうなって事を言っているんだけど、歌詞の内容も相まってどうしてもすがる思いで、今の状況に繋げてしまいたくなるのだ。生きていたら今この曲を歌っただろうとも思う。

そして、「今日ですべてがおわるさ…」と歌い始める。

 

春を失ってしまった2020年。

今まさに「春を眺める余裕もなく…」季節は流れている。これからどれくらいかかるか分からないけれど、きっとこの状況は終息していくのだろうと願う。

 

今日ですべてが終わるさ   今日ですべてが変わる

今日ですべてが報われる   今日ですべてが始まるさ

 

狭い空間で孤独や無力を経験し、

きっとまたいつもの広い世界の中で何者でもない自分に戻る。

 

それでも今なら何者かになれるだろうか。

こぶしに握った爪跡には嘘はつけない。

加川さんの赤いTシャツに、自らの決意をなぞらえる。

 

加川良 / 春夏秋冬

https://m.youtube.com/watch?v=GV2r9Sb87Zk

合点。

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まだ母のお腹の中にいる時、母の実家にお坊さんが訪ねてきて、お腹の子は大きくなったら大器晩成すると言われた事があったらしい。たまに似たような話をしている人がいるので、母親が子供にする子守唄の様なものだと思う。

ただうちの母がするそういった類の話には、空想の様でいていつも証拠が存在する。それはいつも自分が体現している。けれど特にスピリチュアルな気配はまるでない。母親ってそういうもんだと言われたら、何も言えないのだけれど。

 

こないだ好きな音楽ライターの方が、ミックスを盤にしたCD-Rを作ったので、欲しい人にプレゼントするとインスタにアップしていた。十数年前にもそういった事があり、メールをして送って頂いた事があった。世の中的にも自分的にも大変な時期だったので、何だか一際思い入れがあり、今でもそのCD-Rは大事にしている。

最初のアップでは、気付いた時にはもう締め切っていた。数日後また追加あるので、また案内するという告知だけはいち早く見て、よーしと身構えていたが、家事や子供の世話をしてたら、もう締め切っていた。どうしても聴きたかったし、盤で欲しかったので、もう駄目ですよねぇ…的なダイレクトメッセージを送ろうかと思ったがやめた。

仕方ない。きっと今じゃない。次にもし応募に間に合った時の音が、自分に縁がある音なのだ。諦めよりも不思議と次に導かれる様な、自分でもよく分からない感情でいた。すごく不思議な感覚。

 

もうずっと長い間、いい加減次のステージで仕事がしたいと思ってきた。家族の事、年齢的な事もあり、なかなか前に進めないので、思い切って自分で会社を立ち上げてしまおうとまで思っていた。勿論先立つ物なんてない。しかし強引にでも進めていかないと蓄えてきた経験を自分の思う様に活かしきれないと考えていた。今の仕事の副業としてでも何とか頭の中にあるものを形にしていきたい。それは今も同じだ。実際に転職の機会は何度かあった。その度に条件面で折り合わず見送ってきた。

今の様な世の中になる事を想像もしていなかった。あの時に色々行動していたら、きっと今頃大変な事になっていた。

こんな言葉をこんなにも易々と、言葉として表現するのさえ恥ずかしいのだが、それでもこう表現するしか方法を持ち合わせていない。

だから今がある。全部分かりきっていた言葉が、CD-Rがもらえなかった事で思いもよらず腑に落ちた。

十数年前にも勝手ながらも運命めいたものを感じたライターさんのCD-Rだったから、腑に落ちた事が説得力を持っている。いい歳をして青くさい青春を語る言葉みたいで未熟で本当にこっぱずかしい。それでもやはり、今ではない。きっと成るようになる。そこに導かれている。そういう表現でしか合点がいかない。

そう思った時にふと、母がお坊さんに言われた大器晩成の言葉を思い出した。

 

Spiritualized / I'm Your Man

https://m.youtube.com/watch?v=4vNrHoLS1zc

Loving The Alien

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『エイリアン…』

・性質を異にして・かけ離れて

・調和しないで・相いれなくて・地球圏外の

公開にしている限りは誰かが目にする事を覚悟はしている。

具体的に動き出すまでは、特に誰に見てもらおうと思って書いてるのではないが、近しい人や、興味を持ってもらった人に読んでもらえるように、限られた先からはここへこれるようにはしている。ありがたいと同時に、拙い駄文で恐れ多く恥ずかしい。

光栄な事に、職場の有名な(本人は知らないと思うが皆にはもうバレてる)アカウントディガーもこっそり見ているらしい。それは別にいいんだけれど、そのディガーがそぶりも見せずしたり顔でいると思うと、捕らわれたエイリアンみたいに窮屈そうでかわいそうになる。普段プライベートの会話をする人物、全く面識のない人ならありがたいのだが、職場でしかも週に数回顔を合わすだけのあまり関わりがない人物には奇妙な後味が残る。職場以外の人にはありがたさしかないが。

 

世の中には相いれない人間なんて山程いるものだ。

こういう状況の中では特に、一億総野党と化する。頑張る方法が難しい今、専門家が研究を進めたり、企業が新しい物作りをしたりして奮闘している。

政治的には、リーダー達がそれぞれに修正をし合いながら、より的確な政策を的確なタイミングで実施出来るよう導いていくのが頑張りなのだと思う。

宣言を受け、ディスらずより正しく協力しようとする府知事の発言に少し安堵する。

全員ろくなもんじゃないと思っていた政治家の中にも、こういうシーンが垣間見えるくらい、状況は切迫しているのかもしれない。

政治家だからやって当たり前だとは思う。けれど、誰がこんな状況を経験したのか。きっと戦後以来誰もいないだろう。そんな中で今あるべきスタンスでいる事を大切にしている人を決してディスりたくはない。勿論最終的には、きっちりと役割を果たしてもらわないといけないが。

相いれない中でも、常に他者を敬う事を忘れないようにしないと。と省みる。

 

David Bowie / Loving The Alien

https://m.youtube.com/watch?v=ns2hmyP0mGY

 

スタンダード

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下の子供が4月から保育園の上のクラスに進級する。今通っているところは年齢によって通う場所が変わる。家から歩いてすぐのところにあったのが、自転車を使って送り迎えをする事になる。自転車も古くなってきたし、これを機にそろそろ電動機付き自転車に買い替えようという事になり、都会にある大型の家電量販店に行く。

平日という事と、昨今の状況で人もまばら。

だだっ広い店内はほぼ貸切状態。

そこへ仕事の無茶な引き継ぎのメールがきたが、少しのイライラを覚えながらも、それを隠しながら自転車のフロアにたどり着いた。

めちゃくちゃデカいフロアにずらっと並んだ自転車は、そこそこ大きな駅の駐輪場くらいある。どれもこれも見た目は似ているものだから目移りでトランス状態。

といっても、自転車を選んでいたのは妻の方で、自分は同じフロアにあったキャンプ用品のコーナーで、上の子供ときゃっきゃとはしゃぎまくっていた。

さっきまでのイライラは何処へ。

椅子に座ったり、テントの中で寝転んだり、キャンプへの妄想を膨らませている途中で、映画「リバー・ランズ・スルー・イット」をふと思い出す。きっと"自然"というキーワードのせい。マーク・アイシャムの音楽も大好きだ。スウィングジャズといえば、未だに劇中で主人公が彼女とダンスするシーンを思い浮かべるほどあのシーンが好きだ。圧倒的な大自然の美しさ、出演者たち全員の細やかな演技、監督のロバート・レッドフォードがノンクレジットでナレーションしてるのも。主人公の少年時代を、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが演じてるのも。何よりそういった全ての要素が、家族の葛藤を描いた脚本を際立たせる一要素として存在しているところ。自分の感情の至る所のツボを刺激する。

「あぁ全部揃えてキャンプしたいよなぁ…」とテントに開いた天窓の向こうにある天井の、さらに向こうの大空を思い馳せながら呟く。返す刀で上の子供が遠い目をして、「稼ぎがねぇ…」と呟く。こちらも「そうでしたねぇ…」と、お約束のシニカルなやりとり。それを何度か繰り返して自転車売り場に戻る。

ちょっとしたコースのような試乗スペースで、今まさに妻が試乗しようとしているところだった。一周して戻って来た時には、「わたしこのまま購入しちゃうよ顔」で自分にも試乗を促す。

それではと、一漕ぎ…二漕ぎ…。買うよねこれは。

「あなたも凄さが分かったのだから、わたしこのまま購入しちゃうよ顔」の妻はそのままスタッフの方に購入を申し出るも、コロナで部品供給の目処がたっていないからいつ入荷があるか分からないという事らしい。

妻の落胆の表情に、愛おしさを感じたのが妙に悔しい。

何でもない休日は、少しの時間だけいつもの日常を取り戻していた。

 

https://m.youtube.com/watch?v=sgciiMl66ak